90年代~2000年代ヒップホップの名トラックメイカーといえば誰を思い浮かべますか?
筆者は間違いなくSWIZZ BEATZ(スウィズビーツ)を1人に挙げます。今回はブラックミュージック界に数々の名曲を残してきたトラックメイカー、SWIZZ BEATZ(スウィズビーツ)のおすすめ曲をご紹介します。
2018年には約11年ぶりとなるニューアルバム「POISON」が発売され、往年のヒップホップファンも再注目しています。
ゴリゴリに唸るベーストラックはブラックミュージック好きなら必ず聴いておくべきトラックメイカーですので要チェックですよ!
目次
SWIZZ BEATZ(スウィズ・ビーツ)とは?人気の背景
スウィズビーツ(通称 Swizzy(スウィズィー))はヒップホップが誕生したとされている地、ニューヨーク州ブロンクス出身。インドやスパニッシュ系の混合の血を受け継いでいる彼は、ラッパー経験を通してからトラックメイカーへと転身。
90年後半にDMXのデビューアルバム「It’s Dark And Hell Is Hot」収録曲でスウィズビーツがトラックメイキングした「Ruff Ryders’ Anthem」がクラブバンガーとして注目され、ラフライダーズの存在が一気にメインストリームへと駆け上がります。
それからスウィズビーツ製トラックの人気に火がつき、DMX、Jadakiss、The LOXやEveなどのラフライダーズメンバーのプロデュースだけでなく、Jay-ZやNas、Busta Rhymesといった大物ラッパーへのトラック提供でヒットを飛ばし更なる人気を博しました。
2000年代に入るとT.I.の「Bring Em Out」やBeyonceの「Check On It」などの爆発的大ヒットでその名をさらに押し上げ、その後もAlicia KeysやDrakeなど大物アーティストへのトラック提供でその勢いは止まりません。
また、自身でもラップを再始動しソロアルバムをリリースしたりと活動の幅を広げて成功を収めています。
なぜここまでスウィズビーツ製トラックは人気が出たのか?
従来のヒップホップのトラックといえばブレイクビーツにサンプリングを多用しファンク色が強いものが多かったのですが、2000年前後辺りからファレル率いるThe NeptunesやJust Blazeなど、新鋭プロデューサー達が繰り出す良い意味で“抜け感”のあるシンプルなトラックがメインストリームで主流に。
それと同時に各エリアごとに特徴的なサウンドが目立つようになります。例えば南部では倍速ハイハットとバウンスビートのいわゆる“チキチキサウンド”やLil Jonらの“クランクビート”が、西海岸のベイエリアではE-40らが“Hyphy”(ハイフィー)なるサウンドを生み出し新しいムーヴメントを確立していました。
スウィズビーツはこれらのムーヴメントの良いとこどりと独自のビートを上手く消化し、オリジナリティ溢れるサウンドを確立させました。彼はこれらニューウェーブのうねりの中心にいたことは間違いありません。
先ずは実際に聴いてみて体感して下さい!かっこよさ・特徴は最下部にもまとめてあります。
スウィズ・ビーツおすすめ名曲集26選はこちら
往年のクラシックから最新おすすめ曲までまとめました。中毒性のあるかっこよさを実感してもらえたら嬉しいです。(ベース音MAX推奨です)
当記事で一番に紹介しているDMX(本名:Earl Simmons)が2021年4月9日に50歳という若さで他界されたとのこと。死因は心臓発作。Swizzyと共に90年~00年代を盛り上げてくれたレジェンドの死は早すぎました。二人の再タッグを見たかったのですがそれもかなわない期待に…追悼の意を込め、改めてここでご紹介していきます。
DMXーRuff Ryders’ Anthem
まずは泣く子も黙るDMXの代表曲「Ruff Ryders’s Anthem」から。
ループし続けるシンセ音がクセになります。シンプルすぎるゆえにDMXのダミ声と太いビートがとても映えますね。この曲でRuff Rydersが一気に注目される存在に。
DMXーParty Up(Up In Here)
シングルカットされたDMXの「Party Up(Up In Here)」。
いまだに定番アンセムとしてクラブでプレイされ続けています。ホイッスル音と掛け声でイントロから一気にテンション上がりますねよ!あまりにも有名なフックの“Up in here~”はフロアでも大合唱必須。
DMXーGet It On The Floor
イカつい“Let’s get it on~”から始まる「Get It On The Floor」もいまだにクラブで掛かる定番クラブバンガー。
DMXの攻撃的なラップフロー、ゴリゴリのビートとキャッチーなフックで盛り上がらないわけがありません。2000年初頭の楽曲ですが今聴いてもかっこいいです。
R.I.P.
CassidyーI’m A Hustla
スウィズビーツのレコードレーベル“Full Surface”から登場したラッパーCassidyの「I’m A Hustla」は、2005年にシングルリリースされたヒットチューンです。
当時ビルボードチャートのラップ部門で最高5位をマークするなど注目を集めました。イントロとフックのサンプリングは…そう、Jay-Zです。
Jay-Zのアルバム「The Black Album」より、「Dirt Off Your Shoulder」のヴァースからの引用。(元ネタもカッコよすぎ)
The Notorious B.I.G.ーSpit Your Game ft. Twista, Krazy Bone, 8Ball & MJG
今は亡きThe Notorious B.I.G.の残された音源により2005年にリリースされたアルバム「Duets:The Final Chapter」の収録曲「Spit Your Game」はスウィズビーツプロデュース。
Walter Jacksonの「My Ship Is Coming In」をサンプリングしループされるだけのシンプルなスロートラックですが、ビギーの訴えかけているかのような高速ラップからさらに超高速なTwistaのラップ、Krazy Boneのいつものなめらかなフローが調和し最高にイカした一曲にまとまっています。
最後の“Notorious〜”のフレーズを繰り返すあたり、リスペクトの想いが伝わってきます。
JadakissーWho’s Real ft. Swizz Beatz, OJ Da Juiceman
「Who’s Real」は2009年にリリースされたJadakissのシングル曲。
ループするホーンの音と分厚いビートがクールです。フックの“Clap Your Hands”のパートでみんなでクラップするのはクラブでお決まりでした。
Jay ZーOn To The Next One
「On To The Next One」は2009年にリリースされたJay-Zの12枚目のアルバム「The Blue Print」からのシングルカット曲。こちらはLive映像。
この曲はグラミー賞の最優秀ラップ・パフォーマンス賞を受賞し同アルバムもノミネートされていました。イントロから延々とループするサンプリングはフランスのテクノデュオ、“Justice”の代表曲「D.A.N.C.E.」の“Liveバージョン”のフレーズ。お洒落な元ネタをフックを被せてくるのがクールです。Swizzy流の重々しいビート&怪しげなサンプリングは中毒性高し。
T.I.ーBring Em Out
アトランタ出身のラッパーT.I.は今やハリウッド映画に出演したりと多方面で活躍。
「Bring Em Out」はT.I.の出世作であり、僕がスウィズビーツのトラックにハマるきっかけとなった曲。Jay-Zの「What Mora Can I Say」の“Bring Em Out”のイカしたフレーズと、ホイッスル音+バウンスビートのぶち上げ系パーティーチューンは当時のヒップホップの楽しさを教えてもらいました。バウンスビートが主流になっていたサウス系とSwizzyサウンドとのミックスが新鮮でシンプルにノレる一曲。
Remy MartinーWhuteva
Fat Joe率いるTerror Squadの一員だったRemy Maの2005年のシングル曲「Whuteva」。
David Shireの「Night On Disco Mountain」のサンプリングがダークな雰囲気を醸し出していて耳に残るサウンドになっています。フックの“Whuteva”の掛け声やスウィズィーのコーラスがキャッチーでクラブで盛り上がるチューン。
EveーTambourine
「Tambourine」はラフライダーズで紅一点ラッパーだったEveの2007年にヒットした曲。
“Soul Searchers”の70年代のファンクナンバー「Blow Your Whistle」のサンプルネタがポップさを感じられ、ダンサブルなトラックと良くマッチしています。
It’s Me Snitches
スウィズビーツの2007年のソロアルバム「One Man Band Man」よりリードシングル「It’s Me Sniches」(It’s Me Bitches)。
コロコロと骨が砕けるような音とバウンスするドラムビートが面白く中毒性が高いグルーヴ感があります。後半のスクラッチがかっこいい。
MashondaーBlack Out ft. Snoop Dogg
スウィズビーツの前妻、Mashondaの「Black Out」ではウェッサイの番犬Snoop Doggをフィーチャー。
タムタム連打のような音とスヌープのウェットなラップが何とも言えない脱力感を演出していてかっこいい。フックのマションダの裏返る声と、“Black Out~”のウィスパーが最高にイカしてます!
BeyoncéーCheck On It ft. Bun B, Slim Thug
ここからはBeyonce三連チャン。
「Check On It」は2006年公開の映画「The Pink Panther」のサウンドトラックにもなった曲。MVでもピンクを基調としていてピンクパンサーを連想させられます。
当時クラブやラジオでもパワープレイされていたので知っている方も多いのでは?太いベースラインと綺麗な歌メロがかっこいい。
BeyoncéーGet Me Bodied ft. Voltio
「Get Me Bodied」はBeyonceの踊れるパーティーチューン。
唸るベースラインとクラップ音のシンプルなトラックにシングジェイスタイルで乗せるビヨンセの歌がめちゃくちゃクールです。
BeyoncéーUpgrade U (Video) ft. Jay-Z
「Upgrade U」は重厚なベーストラックとホイッスルがぶち上がります。硬派なJay-Zのラップも相性抜群!
ビヨンセのヒットによりヒップホップだけではなく、R&Bシンガーへのトラックプロデュースも確立していきました。ビヨンセのダンスかっこよすぎ。
Gwen StefaniーNow That You Got It ft. Damian “Jr. Gong” Marley
「Now That You Got It」(Remix)は、90年代に成功を収めたUSバンド“No Doubt”のボーカルGwen Stefaniの一曲。
グウェン姐さんの2ndアルバム「The Sweet Escape」の収録曲。乾いたフィールドドラムの音がリズミカルでポップなメロディと相まって明るい仕上がりに。こちらはBob Marleyの息子であるDamian “Jr. Gong” MarleyをフィーチャーしたレゲエRemixバージョンです。
Busta RhymesーTouch It
「Touch It」はヒップホップ黄金期から現在まで、数々の成功を収めているブルックリン代表のBusta Rhymesの2005年のリリース曲。
怪しいエフェクトボイスのイントロが印象的。これはフレンチエレクトロデュオ、“Daft Punk”の「Technologic」のサンプリング。ダフトパンクを知っている方はすぐに気づいたはず。“Turn It Up!!”と“Get Low Bus”の掛け声でテンションが入れ替わるバスタのラップ構成が面白いですよね。爆音で聴くとベーストラックのかっこよさを堪能できます。
N.O.R.E.ーSet It Off ft. Swizz Beatz & J Ru$$
N.O.R.Eといえば「Oye Mi Canto」が日本でもヘビロテされ2000年代のレゲトンブーム火付け役としても記憶に残っています。しかし、元々は長いキャリアを持つラッパーで2007年にリリースされたこの「Set It Off」は、原点回帰とも呼べるノリのラップとスウィズビーツのトラックのかっこよさがシンプルに伝わる一曲です。昔からタッグを組んでる2人なので相性抜群!
Diddy – Dirty MoneyーAss On The Floor ft. Swizz Beatz
「Ass On The Floor」は老舗ヒップホップレーベルのBad BoyレコードからDiddy率いるDirty Moneyが2010年にリリースしたアルバム「Last Train To Paris」の収録曲。
アップテンポなこの曲はスネアドラムのビートが特徴的ですが、このリズムはEDM・レゲエシーンで人気の“Major Lazer”の「Pon De Floor」をサンプルネタとしています。
【関連記事】Major Lazer(メジャー・レイザー)はレゲエ・EDM好きにおすすめ!人気曲18選をご紹介
Major Lazer(メジャー・レイザー)はレゲエ・EDM好きにおすすめ!人気曲18選をご紹介
Gucci ManeーGucci Time ft. Swizz Beatz
Gucci ManeはT.I.と同じアトランタを代表するラッパー。現在のサウスヒップホップの基盤ともなっているトラップミュージックを一気に押し上げた1人。
人気の反面、幾度と服役している生粋の悪のイメージのグッチですが、ラップスキルは半端なくかっこいいです。スウィズビーツのいつもの重厚なベースラインとダークな雰囲気がトラップ色強め。その雰囲気を醸し出しているのは裏でループしている“Justice”の「Phantom Pt. Ⅱ」のサンプリング。元ネタもユニーク。
Travis BarkerーCan A Drummer Get Some ft. Lil Wayne, Rick Ross, Swizz Beatz & Game
Travis Barkerは西海岸ポップパンクバンドでお馴染み“Blink182”のベテラン凄腕ドラマー。
【関連記事】【パンク好きならご存知ですよね?Blink182】ブリンクの厳選おすすめ曲18選をご紹介
【パンク好きならご存知ですよね?Blink182】ブリンクの厳選おすすめ曲18選をご紹介
「Can A Drummer Get Some」はトラヴィスのソロ名義のアルバム「Give The Drummer Some」の収録曲。メンツだけみても豪華すぎ。ロックにこだわらずジャンルのクロスオーバーを試みたアルバムで、多くのラッパーをフィーチャーしておりブラックミュージック色強めの仕上がりです。スウィズビーツは過去にLimp Bizkitなどのリミックスを手掛けておりロック界のアーティストともコラボしています。
Alicia KeysーNew Day
スウィズビーツの現在の妻であるAlicia Keysの2012年のアルバム「Girl On Fire」からのシングルカットされた「New Day」。
この曲はDr. Dreとの共同プロデュースで、勢いのあるスネアドラムビートとパワフルなアリシアの歌声が女性の強さをイメージさせます。
Everyday Birthday ft. Chris Brown, Ludacris
「Everyday Birthday」は、Chris BrownとLudacrisとの豪華コラボで踊らせてくれるパーティーチューン。
サイレン音のループは、Quincy Jones「Iron Side」が元ネタ。(キルビルでもお馴染み)エフェクトされた声やダンスビートが新鮮。4つ打ちビートが入るとノリやすいですよね。
Lil WayneーUproar ft. Swizz Beatz
「Uproar」はLil Wayneの2018年リリースアルバム「The Carter V」からのリードシングル。
どこかオールド感漂うトラックは、90年代ハーレムを代表していたG. Depの「Special Delivery」が元ネタのビート。この頃のヒップホップをよく聴いていた方はピンときたのでは?WizzyもSwizzyのベテランスキルは余裕で若手を蹴散らす勢いです。
SWIZZMONTANA ft. French Montana
約11年ぶりとなるスウィズビーツ名義のアルバム「Poison」収録の「SWIZZMONTANA」はタイトル通りモロッコの血を受け継ぐFrench Montanaとのコラボ曲。
男らしいずっしりベースビートときらびやかなブラス楽器の組み合わせが新鮮。モンタナのライトなラップフローがクールです。
Echo ft. Nas
締めくくりはNasをフィーチャーした「Echo」。こちらもアルバム「Poison」収録曲です。
ジャジー感たっぷりのトラックは70年代のファンクバンド、“The New Birth”の「Echoes On My Mind」を大胆にサンプリング。綺麗なメロディとナズの貫禄あるラップが大人で落ち着いた雰囲気の楽曲に仕上がっています。
まとめ
人気の理由とかっこよさをまとめます。
- 太くて重いベースラインとドラムビートに対して、チープ感たっぷりで抜け感のあるシンセ・キーボードメロディ・スネア音など、音のコントラストがイカツい
- クセのある掛け声やホイッスル音がクラブバンガー的要素満載でアガる
- サンプリングの元ネタが新旧問わず意外性とお洒落さがあり延々ループで中毒性が増す
- 特にクラブなど爆音の場で聴くと楽曲の良さが本領発揮
- 間違いなく2000年代のニューウェーブの渦中にいた存在で、一時代を築いたプロデューサーの一人であることは間違いない!そのかっこよさは現在進行形
少しでもSwizzyサウンドのかっこよさを共感してもらえたら嬉しいです!他にもかっこいい楽曲がたくさんあるのでチェックしてみて下さい。
See you soon!!🐈